本当にそれは股関節の痛み?

股関節やお尻の痛みに悩まれている方も多くいらっしゃいます。
特に女性の比率が多く、痛みだけではなく、痺れやだるさを感じる方もみられます。
今回は股関節・お尻の症状についてフォーカスしていきます。
目次
股関節の症状について
股関節の構造
股関節とは、骨盤の骨と、大腿骨と呼ばれる太ももの骨からなる関節のことをさします。
股関節は人体の中でも最大の関節となっており、強い靭帯や筋肉で固定されていながらも、大きな可動域を持つことが特徴です。

その周りにお尻の筋肉や筋膜、さらに外側には脂肪がくっついています。
特にお尻の脂肪は人体の中でもたくさん含まれています。
主な症状
首の症状は以下のものがよく見受けられます
- 足を動かすと痛む
- 動かした時に音がする
- お尻に痺れがある
- お尻にだるさがある
- 足を組んだりできない
- 体重をかけるなど、負担をかけると痛む
- あぐらをかくと片方の開きが悪い
股関節の痛みで考えられる病態
- 変形性股関節症
- 発育成股関節形成不全
- 関節リウマチ
- グロインペイン症候群
- 離断性骨軟骨炎
- 滑液包炎
- 弾発股
- 大腿骨頭壊死症
- 転移性腫瘍
※引用
標準整形外科(医学書院 総編集者;松野丈夫,中村利孝) P112
むずかしい名前ばかり並んでいますが、上記疾患名はあくまで一例で、首の症状は診断がついたからと言って必ずしも症状が一致するとは限りません。
まずはご自身の病態がどういった状態なのかを知ることが大切です。
そのため、よくある症状に少しでも当てはまり、1ヶ月以上同じような症状が続く場合は、一度近くの整形外科に受診されることをおすすめします。
股関節の痛みの原因
股関節の痛みの原因は様々です。単に股関節が変形して、痛みが出ていると言われても、実際には関節よりもその周りの筋肉や、ももうら、お尻が痛いと言われる方もたくさんいらっしゃいます。例えば、股関節の痛みであれば、痛みの場所はここのピンポイントになります。
ピンポイントであれば、関節だけの炎症などが原因の可能性があります。
しかし、以下のような場所が痛む方はどうでしょうか?

この方が抑えている場所は明らかに股関節ではありません。
股関節以外の問題が考えられるでしょう。
その場合は、手術や注射などではなく、理学療法などによって改善する可能性があります。
股関節の痛みは人によって様々ですが、必ずしも股関節の痛みだけではないケースもあるということを知っていただければと思います。
一般的に股関節が痛くなる原因も上げておきましょう。
加齢による関節の摩耗
年齢とともに関節の軟骨が自然に摩耗し、クッションとしての役割が減少します。これにより、骨同士が直接擦れ合い、痛みや炎症が発生すると言われています。
関連疾患: 変形性股関節症(OA)
繰り返しの負荷や過度な使用
長期間にわたる過度な運動や労働により、股関節に過剰なストレスがかかると、軟骨や周囲の組織が損傷しやすくなります。これが痛みや炎症を引き起こします。
また、関節のみならず、周りの筋肉の使いすぎや、使わなさすぎでも、筋肉や筋膜の癒着により痛みとして現れることが多くあります。
関連疾患: 股関節インピンジメント症候群(FAI)、滑液包炎
遺伝的要因
股関節の構造に関する遺伝的な異常や脆弱性(きじゃくせい)があると、股関節の軟骨や骨が劣化しやすくなります。家族歴のある人は特に注意が必要です。
関連疾患: 変形性股関節症(OA)、関節リウマチ(RA)
外傷や急性のけが
転倒や事故、スポーツによる急性の外傷が股関節の骨や軟骨、筋肉、靭帯にダメージを与えることがあります。これが長期的な痛みや不安定感につながることがあります。
古傷のように、怪我が治っているにも関わらず、痛みなどの症状が残っている場合が、筋肉や筋膜の癒着が悪さをしている可能性があります。
関連疾患: 股関節唇損傷、滑液包炎
自己免疫反応
自己免疫疾患では、免疫系が誤って自分の関節を攻撃し、炎症や痛みを引き起こします。これは全身の関節に影響を及ぼす可能性があります。
この場合は、専門機関での薬物療法で改善することもありますので、一度医療機関に相談してみることをオススメします。
関連疾患: 関節リウマチ(RA)
これらの原因は、さまざまな身体の状態に関連していることが多く、個人個人の状態により違いがある場合があります。具体的な診断と治療は専門家に相談されることをオススメします。
いずれにせよ、股関節の症状は個人によって様々であり、専門家に直接体を評価してもらうことが改善への早道かと思われます。
股関節の痛みの治療法
股関節の痛みの治療法には、さまざまなアプローチがあります。
代表的な治療法を5つ紹介します。
- 薬物療法
説明: 痛みや炎症を軽減するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの鎮痛剤を使用します。また、関節リウマチなどの自己免疫疾患の場合、免疫抑制剤や生物学的製剤も用いられることがあります。
適応: 軽度から中等度の痛み、炎症の抑制 - 理学療法:
説明: 筋力強化や柔軟性を向上させるためのエクササイズやストレッチを行います。これにより股関節周囲の筋肉を強化し、関節への負担を軽減します。また、姿勢や歩行の改善も図ります。
適応: 慢性的な痛み、術後のリハビリ - 生活習慣の改善:
説明: 体重管理や姿勢の改善、適切な靴の選択など、日常生活での負担を減らすための工夫をします。過度な運動や負荷を避け、適度な運動を継続することも重要です。
適応: 軽度から中等度の痛み、予防的措置 - 注射療法:
説明: コルチコステロイド注射やヒアルロン酸注射を関節に直接投与することで、炎症を抑えたり、潤滑を改善したりします。これにより一時的に痛みを緩和することができます。
適応: 中等度から重度の痛み、薬物療法が効果的でない場合 - 手術療法
説明: 保存的な治療法が効果を示さない場合や重度の関節損傷がある場合に手術を行います。股関節全置換術(人工股関節置換術)や関節鏡視下手術などがあります。これにより関節の機能を回復し、痛みを根本的に解消します。
適応: 重度の関節損傷、保存的療法が無効な場合
これらの治療法は、患者さんの具体的な症状や状態に応じて選択されます。
中でも理学療法は慢性的に続く症状には効果的とされています。
理学療法の中にも様々なアプローチがあり、著者である、私自身は、運動療法や徒手療法(筋膜リリース)によって、症状改善された方をたくさんみてきたため、注射やお薬以外の選択肢として、積極的に理学療法を受けていただくことを強くオススメしています。
予防策
まず最初に気をつけておくべき点は内股を避けるということです。
特に女性は股関節の形状が、元々内側に向いている方が多いと言われています。
女性座りのように(横座りともいいます)、女性はできて、男性はできない座り方がなんとなくイメージできるかと思います。
元々股関節の形状が内側になっている方は、特に内股の動きや姿勢になりやすいです。
まずはご自身の足が内股になっていないかどうかをチェックし、日常ではつま先と膝が一直線になるように心がけましょう。
現在の医療では、股関節の痛みに対しては筋力トレーニングやストレッチなどの運動がより根拠のある治療法になっています。
しかし、理学療法士的な観点で見ると、痛みを持ったまま運動しても、身体をかばったり、痛みを悪化させてしまうケースが多い印象です。
そのため、運動をする前段階として、やはり痛みの軽減をする必要があると考えております。
まずは痛みのある部分の観察からはじめて見ましょう。
腫れ具合、曲げ伸ばしのしやすさ、押した時の痛み、痛む時間帯や場所。それらはご自身でチェックする必要があり、専門家にはわからない情報です。
膝の症状を観察したあとは、痛みのセンサーを適切にしていく必要があります。
まずは触れることからはじめて見ましょう。もちろん痛い部分を強い力で圧迫してしまうと、痛みが強くなってしまう場合もあります。そのため、最初は手を添えるくらいの強さで、皮ふを撫でるようにマッサージをしてみましょう。膝の裏や、表、横など、様々な場所をいろいろな方向でマッサージしていくと、他よりも硬い部分や柔らかい部分があるかもしれません。
その部分に刺激を与えて、楽になった感覚があれば、もしかしたら痛みのセンサーが異常になっている可能性があります。
痛みのセンサーについて詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
Q&A
Q:股関節の痛みが運動によって悪化することはありますか?
A:無理な運動や個々人にあった正しいフォームではない運動は、痛みを悪化させる可能性があります。SNSなどでオススメされているストレッチなどを無闇に行うと悪化するケースがあるため、気をつけましょう。適した運動やケアの仕方は、専門家の意見を仰ぎましょう。適度な運動と正しいフォームでのエクササイズは股関節の健康を維持するのに役立ちます。
Q:股関節が硬いのですが、ストレッチするたびに逆に硬くなっていく感じがします。
A:ストレッチが逆に緊張を高める要因になっているかもしれません。ストレッチが負担になっている可能性があるので、まずはマッサージなどで、ほぐすようなアプローチを行ってみるほうが良いかもしれません。
まとめ
股関節の痛みは、一人ひとりの構造的な特徴や生活習慣、遺伝的要因、外傷など、さまざまな要因によって引き起こされます。
具体的な症状としては、足を動かした際の痛みや音、お尻の痺れやだるさ、足を組むことができないなどが挙げられます。これらの症状に対しては、薬物療法や理学療法、生活習慣の改善、注射療法、手術療法など、多岐にわたる治療法が存在します。
予防策としては、内股を避けることや、日常的に適度な運動を心がけることが重要です。特に、正しいフォームでのエクササイズや、痛みを感じた際には無理をせず専門家に相談することが推奨されます。
痛みが既に出ている方は、一度いろいろな箇所を手で触れ、感覚のセンサーを適切にすることが鍵となることもあります。
股関節の痛みは個人によって原因や症状が異なるため、自分の体をよく観察し、適切なケアを行うことが大切です。長期にわたって症状が続く場合は、整形外科や理学療法士の専門家に相談し、早期に適切な治療を受けることが、改善への近道となるでしょう。